目次
1. 微生物と細菌の増殖について
2.
細菌の制御方法
3. 食品中の微生物制御
4. 微生物制御と加熱殺菌法
微生物の分類
・原生動物・・・ アメーバなど
・細菌・・・・ バクテリアなど
・真菌・・・ かびや酵母など
・ウイルス・・・ノロウィルスなど
微生物はどんなところにいるのか?
・土壌や水
・空気中やホコリ
・ヒトを含む腸管内
・植物や農産物
・魚介類
・その他
自然界の微生物数はいったいどれくらい?
・土壌中・・・ 1億〜100億/c
・水 中・・・ 1万〜100万/t
・人畜のふん便中: 100億〜1千億/c
細菌のはいったい、どれ位の大きさ?
・細菌は肉眼では見られないほど極小な生き物です。
・0.5〜10㎛=0.5/1000mm〜1/100mm
・100億個程度に増殖して「コロニー(集落)」を形成して初めて肉眼で観察できる。
細菌はいったいどのようにして、増殖するのか?
細菌は、発育と分裂の必要条件(温度・水分・栄養分)がそろうと、細菌の栄養細胞が発育して「二つに分裂」し、それを繰り返します。例えば、1個の細胞が20分で分裂する場合10〜12時間で10億個にもなります。
細菌の増殖パターン
菌数の対比
B定常期 A対数期 C死滅期 @誘導期 |
1.
誘導期
2.
対数期
3.
定常期
4.
死滅期
大多数の食品には、細菌の増殖に必要な栄養分と水分を提供しています。
食品の製造/加工の目標は、望ましくない細菌の世代交代を遅らせたり、取り除いたりすることであり、
それによって食品の微生物水準を一定に保たせたり、遅い速度でしか増殖させないようにすることです。
■ 温度
ほとんどの細菌は、ヒトにとっても良い環境の10〜37℃付近で急速に増殖する
・好熱菌(thermopiles)
43℃以上の温度域で生育し、至適生育温度は55〜65℃である。
・好温菌(Mesophiles)
15〜43℃以上の温度域で生育し、至適生育温度は20〜43℃である。
・好冷菌(Psychrophils)
0〜15℃以上の温度域で生育し、至適生育温度は0〜7℃である。
■ 水分
細菌は固形物から栄養分を摂取できない。「水に溶けている栄養分」のみだ。
食品の栄養分が溶けた溶液について、その食品の水の自由度を「水分活性Aw」で表す。自由水の量が少ないと増殖は抑制される。
【主な食品の水分活性Aw】
生肉類、生魚類 0.98〜0.99 ジャム 0.79
果実、野菜 0.96
ケーキ
0.74
ハム、ソーセージ 0.89〜0.935 小麦粉 0.61
塩鮭
0.89
■ 栄養分
ヒトが食べるものはほとんどが、細菌にとって生育するための最適な場所です。特に、牛乳や肉類、鶏卵や魚介類のように高タンパク質食品が、細菌の成育と増殖には、最も都合の良い栄養分だ。
■ その他の条件
♦ 酸性度
細菌は中性や弱酸性の領域(Ph4.6〜9.0)で最も増殖し、強い酸性領域やアルカリ性領域ではその生長が抑制される。酢やレモン汁を食品にかけることで、細菌の増殖を抑えることは出来るが、確実に制御出来るとは断言できない。
♦ 酸素
酸素(空気)の存在の有無は、細菌の種類によって異なっています。
好気性菌・・・生育には酸素が必要な細菌
嫌気性菌・・・生育に酸素を必要としない細菌
真空包装や缶詰などの、酸素の欠乏した場所で生育する。
(ボツリヌス菌、ウエルシュ菌などは酸素があると発育できない)
通性嫌気性菌・酸素の有無に関係なく生育する細菌
食中毒を引き起こす細菌の多くがこの種類
(腸炎ビブリオ、サルモネラ、大腸菌、黄色ブドウ球菌など)
前回お話した食品を取り巻く要因から、今回は製造加工あるいは貯蔵などの人為的に変化させる処置要因について考えて見ましょう。
@ 包装などの汚染経路の遮断
A 洗浄などによる除菌
B 静菌的処理:低温処置(冷蔵、冷凍)、濃縮、乾燥、
気相調節処置(真空・脱酸素・ガス置換)
化学物質添加処理、発酵処理など
C 殺菌的処理:熱殺菌(加熱)
冷殺菌(薬剤、ガス、オゾン、紫外線、放射線など)
超高圧、超音波殺菌など
<チョット一休み>
殺菌とは:食品の安全性や品質を損なう菌を殺すことであり必ずしも無菌ではない。
滅菌とは:食品中のあらゆる微生物を死滅あるいは除去することである。
消毒とは:病原菌を熱や薬物で死滅させたり除去することで感染が起こらないようにすること
食品を低温に置くと,なぜ食品の安全性や保存が高まるのでしょうか?
温度は,微生物の発育とそれに伴う化学反応の速度に顕著に影響し、一般に低温になるほど反応が遅くなるため,誘導期と世代交代時間は延長して増殖速度が低下する。さらに増殖下限以下の温度では休眠状態に入るか徐々に死滅していく。
わが国では法的に規制された食品の保存温度の上限は10℃が大部分だが,食中毒菌の多くは発育が抑制されるものの一部は発育可能である。腐敗を効果的に抑制するという点から、国際的には4℃以下が採用されている。
米国FDA(食品医薬品局)は主に食肉を対象の保存温度と時間の関係から、保存温度ごとに食品がどの程度の期間,安全性が確保できるかの目安を示しているが、これによると各保存温度における保持時間は病原菌が10回分裂する時間を規準としている。10℃保存では2.5日ぐらいが最大保持時間であり,−1.1℃がFDAにおいて安全な冷蔵温度となっている。
食品を加熱すると,なぜ食品の安全性や保存が高まるのでしょうか?
加熱調理により,食品からの汚染微生物を死滅させるための時間は加熱当初の菌数に依存するが,微生物の死滅は対数的に起こるため,ある範囲内では直線的に減少する。一般的に,芽胞を形成しない細菌は,食肉製品や乳・乳製品において法的に規定されている製造規準の殺菌条件である63℃,30分間でほぼ完全に死滅させることができるが,セレウス菌やボツリヌス菌などの芽胞はこの温度で死滅させることが出来ない。
食品衛生規範の「弁当・そうざいの衛生規範」及び(大量調理マニュアル)では,加熱条件を下記のように定めている。
製品の中心温度と加熱時間 「75℃加熱時間1分間以上」
食品の微生物制御に使用される一般的技術は
@
食品への汚染防止(遮断):
包装,コーテイング,クリーンルーム,クリーンベンチ
A
食品から取り除く(除菌):
洗浄,沈降(遠心分離),ろ過、電気的除菌(殺菌灯などの紫外線照射)
B
増殖の抑制(静菌):
(1)低温保持
・冷蔵(わが国では10℃以下だが、国際的には4℃以下が規準)・
・冷凍(わが国では冷凍食品は−15℃以下,アイスクリームは−18℃以下)
(2)水分活性低下
・濃縮(塩蔵・糖蔵など)・乾燥
(3)気相調節
・真空・脱酸素・ガス置換
(4)化学物質添加
・食塩・糖・pH調整剤・有機酸・食品添加物・アルコール・抗菌性物質
(5)微生物の利用
・乳酸菌等による発酵
C
汚染微生物を殺す(殺菌):
(1)加熱殺菌
・低温殺菌・高温殺菌・湿熱殺菌・乾熱殺菌・高温短時間殺菌・高周波殺菌
・遠赤外線加熱殺菌・電気抵抗加熱殺菌
(2)冷殺菌
・薬剤殺菌(アルコール,次亜塩素酸Na,オゾン,酸性電解水)
・放射線殺菌(ガンマ線,電子線,エックス線)
・紫外線殺菌
近年高出力のパルス光での表面殺菌を行う閃光パルス殺菌などが開発されている
■食品工場で応用される種々の加熱殺菌法
殺菌条件 |
目的 |
63℃・ 15分 |
・胞子を含めた一般の糸条菌,酵母の殺菌。 ・但し耐熱性の強い糸条菌,酵母もあることに注意。 |
63℃・ 20分 |
・一般のウイルスの不活性化。 ・中にはポリオウイルスのようにかなり強い耐熱性を示すも のもある。 |
63℃ 20分 |
・一般病原菌の殺菌。 ・低温殺菌,商業的殺菌と呼ばれる。 ・わが国の法的殺菌規準となっている。 |
80℃ 15分 |
・細菌の芽胞以外の微生物(栄養体)の殺菌。 |
121℃・ 15〜20分 |
・すべての微生物の殺菌。 ・レトルト食品やビン・缶詰めの殺菌。 ・ときには、バチルス菌などが生残することがある。 |
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